少子高齢化による慢性的な人手不足や、高度経済成長期に造られたインフラの老朽化問題への対応などで、建設業界では省力化や自動化が大きな課題です。また、住宅や商業施設などの建築物に対して高度なデザイン性が求められるようになってきました。しかし、型枠にコンクリートを流し込む従来の工法では限界があります。
そこで、世界の建設業界で注目を集めるのが3Dプリンターです。3D-CADデータをもとに、ロボットの先端に組み込まれたプリンターヘッドから原料を押し出して積層し、立体物を自動で製作する3Dプリンターなら、複雑な形状や精緻なデザインも自由自在。多種多様な景観材や建築物を短時間で、自動的に製作することが可能になります。
クラボウは、これまでにセメント系材料を用いた住宅用の外装化粧材を手がけてきた実績があります。そこで培った材料配合や押出成形の技術を活用するとともに、欧州で多くの実績を持つエクストリー社の3Dプリンターを導入。国内で先駆けて、建設用3Dプリンティング事業をスタートしました。
私は入社2年目ですが、材料の配合開発や、3Dプリンターでの実際の製作まで幅広い業務を担当しています。当社が使用するプリンターはセメント系材料を使っており、プレミックスと呼ばれる専用原料に水と添加剤を混ぜて作る材料は、その配合や混ぜ方が重要です。細かな成形をしながら高く積層しても崩れない適切な粘度を出すのが難しく、トライ&エラーの連続。積層の試験のために生クリームの絞り袋を使ってみたり、ゴム手袋の指に穴を開けて試したりしたこともあります。
ロボットアームの操作にも苦労しました。大きなものや高さがあるものはとくに難しく、プリンターヘッドとロボットアームが干渉してぶつかったり、原料ホースが成形物に当たって完成しかけた試作品を壊してしまったことも。本来は、プリンターメーカーのエクストリー社から直接受けられる技術指導などもコロナ禍でできないため、判らないことはフランスとリモートのやり取りでなんとか解決していきました。
そして、曲線や流線型、中空の構造物はもちろん、織物のような精緻な柄や、風にたなびくようなドレープ形状まで積層で表現できるように。花をモチーフにした複雑な形状のテーブルを成形する技術や、積層による陰影でロゴデザインを浮かび上がらせることにも成功しました。
現在は、住宅や商業施設の外構材、モニュメントなどの景観材の受注生産を開始したところですが、次のステップとして、3Dプリンティング装置を建設現場に設置してその場で製作する「オンサイト化」を目指しています。また、より高機能な独自の国産材料や、CO2を吸収する環境に配慮した材料開発も進めていきます。
さらに、材料メーカーやゼネコンなどのパートナー企業、大学などとも連携して、全く新しい建築手法やデザイン、環境対応などの新しい機能を模索していきたいと考えています。将来的には、住宅や橋などを丸ごと造ったり、災害現場などで迅速な補修作業などに対応することも視野に入れています。
今は建築物と言えば大半が四角い形をしていますが、建築3Dプリンティングが普及すれば色々な形状をした個性的な建築が増えて行くと思います。そうすれば、街の景観は自然とワクワクするものに変わっていくでしょう。私が入社して初めて配属されたのがこの部署だったので、3Dプリンティング事業はいわば同期の桜。面白い街づくりや、環境と働く人にやさしい建設現場に貢献できることを目指して、ともに学び、成長していきたいと思います。
*2024年3月31日をもって本プロジェクトは終了しました。
日本経済新聞、日経産業新聞などでシリーズ展開中
エピソード1
アニマルフリーな羽毛で
心まで暖めるクラボウ
エピソード2
3Dプリンターで
街づくりを変えるクラボウ
エピソード3
畜産の持続可能性を
切り拓くクラボウ
エピソード4
半導体の品質をセンシング
技術で支えるクラボウ
エピソード1
ロボットの「できない」を
可能にするクラボウ
エピソード2
繊維でウイルスから
社会を守るクラボウ
エピソード3
フィルターで空気と社会を
変えるクラボウ
エピソード4
iPS細胞で健康寿命を
支えるクラボウ
持続可能な開発目標(SDGs)に対するクラボウの姿勢と、関わりの深い事業活動を紹介します。
身近な暮らしの中で使用されているクラボウ製品をご覧いただけます。
クラボウグループの挑戦の歴史やその原点、これからの未来に向けた取組みをご紹介。
当社の事業と人材採用・人材育成に対する考え方を紹介。募集要項やWEBエントリーの窓口も。