シーズン5
面白いことやってやろう。クラボウは検査装置の最適化で世界の道路を守りたい。環境メカトロニクス事業部 情報機器システム部 画像処理課 高﨑雄二 面白いことやってやろう。クラボウは検査装置の最適化で世界の道路を守りたい。環境メカトロニクス事業部 情報機器システム部 画像処理課 高﨑雄二

千里の道もインドから

マンガ1 マンガ2 マンガ3

千里の道もインドから

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日本では、高度経済成長期に造られた道路やトンネルが老朽化しつつあり、安全な運用のために保守管理の必要性が高まっています。しかし、従来の目視による検査は、熟練の作業員による膨大な労力を必要とします。また、従来の検査専用車両は、検査スピードが遅く、道路の車線規制が必要になるなど作業時間やコストの面で高いハードルがありました。  

クラボウは、独自の画像認識技術と高速大容量画像ハンドリング技術を活用し、レーザーを検査面に照射し3D カメラで撮影するだけで、劣化箇所を正確に素早く検出できるインフラ検査システムを開発。レーザーとカメラをコンパクトにユニット化したことで、一般車両にも簡単に取り付けできるようにしました。最高時速100kmで走行しながら検査できるため、検査時の車線規制の必要もなく、作業時間とコストが圧縮でき、効率よく路面検査が行えます。

ひび割れなどの損傷は3Dデータから自動抽出され、豊富な解析ソフトによって目的に合わせたデータとして出力。精度の高いデータをスピーディに取得することができるクラボウのインフラ検査システムは、各地の道路やトンネルなどで活用され、交通インフラの保守管理にイノベーションを巻き起こしています。

国内の道路では着実に実績を上げているクラボウの路面検査システムですが、環境メカトロニクス事業部情報機器システム部の高﨑雄二は、さらに長大な道路網が広がる海外に目を向けていました。そんな折り、NEXCO 東日本のインド法人である「E-NEXCO INDIA」から『インドの高速道路でクラボウの路面検査システムを使えないだろうか?』というオファーが入ります。開発初期からこのシステムを手掛ける上司とともに、「これはチャンス!」と意気込んだものの、日本とは異なる過酷な環境下で、はたして運用できるのか不安がよぎりました。実際に輸出に向けた現地との折衝が始まると、不安は的中。まず、商習慣の違いや法的規制などの問題が次々に立ちはだかります。高﨑らのプロジェクトチームは、それらを粘り強くクリアしながら、2 年がかりで検査ユニットをインドに送り出しました。しかし、本当の試練はここから始まるのです。納品した路面検査システムの稼働状況を確認するため、インドに出張した高﨑は愕然としました。

システムの生命線とも言える精密機器の3D カメラ内部が、粉塵まみれになっていたのです。日本国内とは違い、インドの道路は、車やバイク、自転車などの乗り物が入り乱れて走る中、牛や、犬、鶏などの動物も自由に歩き回っており、また未整備な所も多く砂埃がたくさん舞っています。こんな環境下では、日本と同じ仕様ではシステムが維持できないと判断した高﨑は、現地の検査車両に同乗し可能な限り様々な道路を走り込み、改善策を見つけ急いで防塵対策を施すことに。もともと耐振動性や耐久性が評価されて輸出した製品でしたが、インド特有の砂埃や凹凸の多い路面、長距離走行など、 想像をはるかに超えた道路環境の違いに、高﨑は改めて海外展開の難しさを実感。しかし、今回のように現地の道路環境に適応するよう、検査装置の仕様を最適化することに新たなビジネスチャンスを見つけます。

これまでも、ワシントン・メトロ公共交通局(地下鉄)へのトンネル検査システムや韓国への路面検査システムの輸出実績はあったものの、今回のような過酷な環境下での海外運用は初めてのケースです。その厳しい条件に立ち向かう経験ができたことは、高﨑にとって大きな自信となりました。輸出先の使用環境に合わせたきめ細かい対応力と、運用も含めたトータルシステムの強みを活かして、世界市場への本格参入を目指しています。

インドをはじめ、世界中の新興国では急速にインフラ建設が進む中、その膨大な保守管理作業を行う体制が未だ整備できていないことは大きな社会課題です。クラボウは、検査ユニットのさらなる小型化や、地域に合わせたカスタマイズ力と様々なインフラの保守管理の現場で採用されてきたこれまでの実績をベースに、高精度・低コストの新しいインフラ管理の考え方を世界中に提案。社会の発展と暮らしの安心・安全を守る取り組みに貢献したいと考えています。

高﨑の想いは、製品を通じた課題解決にとどまらず、世界中に「インフラの保守管理の必要性」を広く理解・浸透させること。彼の夢が叶うその日まで、これからも砂まじりの汗を流す毎日は続きます。